東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.5 上映会・表彰式レポート

「東京国際プロジェクションマッピングアワード」は、毎年東京ビッグサイトを舞台に開催されている 学生・若手映像クリエイターの発掘を目的とした日本最大級のプロジェクションマッピングのコンテストです。予選を勝ち抜いたチームが約4ヶ月をかけてプロジェクションマッピング映像を制作、東京ビッグサイトの逆三角形をスクリーンに最終審査に臨みました。

チームで協力して作り上げたプロジェクションマッピング作品を披露し、クリエイティブ業界の第一線で活躍する審査員から評価を受けられることは、若手クリエイターにとってまたとない機会です。また、海外から参加するチームも含め、同年代の作品を数多く見られる貴重な機会でもあります。

第5回目となる今年は、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、初となる完全無観客オンラインでの開催となりました。2020年11月14日(土)、東京ビッグサイトにて開催され、公式サイト内の特設ページ、YouTube、Twitter(Periscope)での配信により、合計214,724人の方に視聴されました。国内外から集結した10チームによる上映会、表彰式の様子をレポートします。

今年のテーマは「CONNECT with」

東京国際プロジェクションマッピングアワードvol.5のテーマは「CONNECT with」。新型コロナウイルス感染症の世界的流行により大きく世界が変化しつつある今、未来に向かって何と繋がっていきたいのかを問われたテーマです。顔を合わせての作業が難しい状況下において、主にリモート環境で制作された作品が集結するというニューノーマル時代の映像コンテストとなりました。

Createdbymodifying"TokyoBigSight"©AIST(LicensedunderCCBY4.0)
オンライン配信は「メイン」「ドローン」「バーチャル」の3種。こちらは「バーチャル」モードの様子
Createdbymodifying"TokyoBigSight"©AIST(LicensedunderCCBY4.0)
また、今回からは新しく「U-25部門」が創設され、25歳以下の若手クリエイターにも門戸を開きました。今回のファイナリストは、学生部門8チーム、U-25部門2チームの全10チームとなりました。

【ノミネートチーム・上映タイトル 当日上映順】
学生部門(8作品)
・HASH「MEDIUM」/東京都立大学
・FOREST「共存」/日本電子専門学校
・34 White City「Narstalgia」/Royal College of Art(イギリスから参加)
・Xenon「remote」/大阪芸術大学
・TEAM KIOI「Shape Of Sounds〜音の可視化〜」/城西国際大学
・ハズバンズ「共栄共存」/大妻女子大学
・ひかえめに大和撫子「ハレ」/日本工学院八王子専門学校
・MDlab.「恋文」/東京造形大学

U-25部門(2作品)
・ATTO「Fræktal」(カナダから参加)
・Harada:Lab「Mirror」
昨年に引き続き、当日の司会進行は、司会・リポーター・モデル・俳優業とマルチに活躍するハリー杉山さんが務めました。審査員を務めたのは、以下の4名。シシヤマザキ氏はリモートでの参加となりました。

【審査員 順不同、敬称略】
川本康(『コマーシャル・フォト』統括編集長)
森内大輔(NHK/プロデューサー・デザイナー)
橋本大佑(演出家・アニメーション作家・視覚芸術アーティスト)
シシヤマザキ(アーティスト/HOTZIPANG所属)

上映会の模様

今回のアワードは、来場者、出演者、スタッフの健康と安全を考慮し、オンライン配信で開催されました。会場の東京ビッグサイト会議棟前広場で上映される様子を、無料でライブ配信。ドローン撮影による映像を含めた複数カメラでの視点切り替え型配信が行われました。また、観客参加型の評価システムも一新。各界のプロフェッショナルによる審査に加え、観客の投票も審査材料に含められました。

学生部門

学生部門は全8チームが参加。トップバッターを務めたのは、東京都立大学のHASHによる「MEDIUM」。繋がるもの、プロジェクションマッピングらしいものを目指して作られた作品です。

審査員講評(川本氏)
三角形の壁面を活かし、蝶々が出てくる最初の部分にわくわくした。展開が次々と変わり、柔らかさや硬さと、表現が多彩で飽きない作品だった。
2番目は日本電子専門学校のFORESTによる「共存」。日常生活中の消費の裏に繋がっている生産を描きました。

審査員講評(森内氏)
生活、日用品がテーマと聞き、何が出てくるのかと思いながら拝見した。結果、予想をいい意味で裏切られた。人間の動きから感じられるユニークさを生活の中から見つける姿勢、想像力を感じ、舞台や映画を1本見たようなストーリー性を感じた。
3番目はイギリスから参加となるチームRoyal College of Artの34 White Cityによる「Narstalgia」。自殺率や環境問題など、社会問題を定義していきたいとの思いから制作。アワードへはリモートでの参加となりました。

審査員講評(橋本氏)
テーマが壮大。社会問題などを扱う際は、どうしても説教臭くなりがちな部分があるが、ダイレクトに人間の根源的なところに訴えてくる、引き込まれる作品だった。絵的な構成も美しい。いつまでも見ていたい、不思議な感覚を味わった。
4番目は大阪芸術大学のXenonによる「remote」。人と簡単に会えない大変な状況下でも、リモートで人と繋がっている様子を明るくポップな作風で描きました。

審査員講評(川本氏)
冒頭、壁面を着信画面にしたのが面白い。その後、喋っている画面がモールス信号のようになり、通信の歴史を辿っていったのも楽しい。途中出てきた絵文字が可愛らしかった。
5番目は城西国際大学のTEAM KIOIによる「Shape Of Sounds〜音の可視化〜」。日常生活の中にあふれる音を可視化しました。生活音が一つの音楽になれば、生活が楽しくなるのではないかとの願いを込めた作品です。

審査員講評(森内氏)
学生のみんなには世界がこう見えているのだなと感じられた。一つひとつの音や日常風景をカラフルに描くことで、日々の生活が楽しく見えたり世界が変わったりするのだと気付かされた作品。
6番目は大妻女子大学のハズバンズによる「共栄共存」。メンバーは全員3DCGの未経験者です。人により破壊された環境から復活していく生命の力強さを描きました。

審査員講評(橋本氏)
3DCGを扱うのが初めてでここまで作り上げたのはすごいことだ。カラフルな世界、幻想的な世界、ダークな世界とさまざまな世界が描かれ、緩急のある音楽と共にエンタメとして成立していた。経験の浅さからくる突っ込みどころはあるが、今後の可能性を感じる作品だと感じる。
7番目は日本工学院八王子専門学校のひかえめに大和撫子による「ハレ」。祭りをテーマにし、華やかな龍が祭りを巡る様子を描きました。新型コロナウイルス感染症により全国各地で祭りが中止となるなか、「お祭り気分を味わってもらえたら」と語りました。

審査員講評(川本氏)
龍の表現に感心した。特にメタル調の表現は難しかったのではないか。龍をモチーフにしたことで、力がみなぎった作品になったと感じた。
学生部門のラストを飾ったのは、東京造形大学のMDlab.による「恋文」。恋心や想いを伝える手段をテーマに、糸電話をモチーフにドキドキや不安といった感情の起伏を描きました。

審査員講評(森内氏)
恋愛にまつわるさまざまな感情を表現されていたと感じる。当たり前のように人と会える社会が一変し、繋がれるありがたさも感じられる。感動した。
学生部門講評(シシ氏)
自分たちの感覚の範囲で伝えよう、イメージを押し広げようとしていると感じた。他のチームの作品を見るのも参考になると思う。作品群の中での自分たちの作品の見え方も振り返っていただけたらいいのではないか。

U-25部門


U-25部門のファイナリストに残ったのは、日本・カナダの2チームです。
まずはカナダから参加となるATTO、作品名は「Fræktal」です。それぞれのユニバース、客観的に見た世界を描きました。

審査員講評(橋本氏)
素晴らしい。個人的にグッときた。宇宙のシーンから細胞に移ったところに意表を突かれた。画面の隅にあった数字など、アイディアがスタイリッシュ。プロジェクションマッピングとしては見えづらいシーンもあったが、削ぎ落された世界が魅力的だった。
U-25部門、アワード全体のラストを飾ったのは、大同大学OB により編成されたHarada:Lab、作品名は「Mirror」です。荒廃した都市や宇宙など、全体的にSFチックな雰囲気が印象的な作品でした。

審査員講評(川本氏)
世界観が私の趣味に合った。途中出てきたウイルスのような表現が炎に変わるところに新しさを感じる。ラストは花で終わらないほうが良かったのではないか。ただ、全体的に格好よく、未来的な作品だった。

表彰式の模様

表彰では、以下の賞が選出されました。

【学生部門】
優秀賞:2チーム
最優秀賞:1チーム

【U-25部門】
最優秀賞:1チーム

【全体】
審査員特別賞:1チーム

学生部門


優秀賞は、以下の2チームとなりました。
学校名:Royal College of Art
チーム名:34 White City
作品名:Narstalgia

<受賞コメント>
受賞したことももちろんうれしかったのですが、何よりコロナの影響がありながらこういったイベントを実施してくれたスタッフの運営そのものにも感動しました。
日本には行けなかったけど、実際に会場にいたような気分になれました。

<総評>
地球規模の社会問題とか自然環境問題をテーマに据えると、わりと説教臭くなったり説明臭くなったりしがちなのですが、そういう事にならず作品として非常に魅力的に見えたのが素晴らしかったです。
ストーリーはないのですが、しっかりと映像の魅力、アニメーションの動き、色でテーマを伝える、感じさせるということがとても上手くいっていました。
理屈じゃなくて魂に訴えてくるような感覚で、技術を超越した感性が見える作品で、非常に好きな作品でした。特にラスト、変に説明しすぎず、見ている人に想像させる詩的な隙間に深みを感じました。<橋本氏>
学校名:城西国際大学
チーム名:TEAM KIOI
作品名:Shape Of Sounds

<受賞コメント>
東京ビッグサイトの壁面に投影された自分たちの映像を見られただけでも感無量でした。優秀賞をいただけて光栄です。半年間リモートメインで作ってきたなかで、さまざまな人に協力していただきました。今日来られなかったメンバーにも、投票してくれた方にも感謝したいです。

<総評>
実写をベースにしているのですが、ロトスコープを採用していました。テーマとしては音を色とか形に変えていく、ということだと思います。ロトスコープがはいることによってリアルがファンタジーに近づき、実写の世界とファンタジーの世界が上手く繋がった点が素晴らしかった。 音の形、というワンアイデアを他のディティールで作り込んでいったことでとてもいい世界観が出来上がっていたと思いました。<川本氏>
最優秀賞には、日本電子専門学校のFORESTが選ばれました。
学校名:日本電子専門学校
チーム名:FOREST
作品名:共存

<受賞コメント>
ありがとうございます、すごく幸せです。本番で投影された映像を見たとき、作ったときと色味が違っていたり、映像が速く見えたりした上、投影後の観客投票による玉も少なかったと感じていたので、本当に嬉しいです。メンバーみんながいい働きをしてくれて、おもしろい作品を作れたことが幸せです。
<総評>
非常にユニークな作品。生き物の内臓に訴えかけていると感じた。消費する私たちは美しくなく、食べたり出したりする「管」だ。そのあたりを茶化したりエンタメの軽さで終わらせたりせず、不気味さとして表現できていた。(シシ氏)

U-25部門


U-25部門の最優秀賞には、Harada:Labが選ばれました。
チーム名:Harada:Lab
作品名:Mirror

<受賞コメント>
僕は本大会2回目の挑戦です。今年、初めてU-25部門を開催していただき、最後のチャンスだと思って参加しました。最後に賞という結果を出せて感無量です。このメンバーで作り上げられて良かったと思っています。
<総評>
鏡をテーマにした、非常に日本的な作品だと感じた。細かいところの色彩や形状まで心配りされており、丹念に描かれていたと感じる。表現が緻密。鏡は日本の神社のご神体であり、日本文化の中心にあるような存在だ。また、自分を映し出す存在でもある。リモート期間で自分と向き合う機会のあった皆さんに見える世界として、描きやすいテーマだったのだろうかと感じた。いいものを見せていただいた。(森内氏)

審査員特別賞


審査員特別賞には、ATTOが選ばれました。
チーム名:ATTO
作品名:Fræktal

<受賞コメント>
心の底からありがとうございます。新型コロナウイルス感染症が収束した暁には日本に行きたいです。プロジェクションマッピングの素晴らしさをシェアしたいと思っています。

<総評>
昨年も海外勢が素晴らしい賞をもらっており、今年も海外から参加した2チームともが非常に高いクオリティだった。作品は今、世の中で起こっていることを地球規模で捉えている点が特徴だ。日本人は身近な人たちへの繋がりを大切にし、着目する傾向にある点に違いを感じた。グローバルな視点で世界の状況を描かれていたのが素晴らしかった。

総評

最後に、森内氏がアワード全体を総評しました。

「例年にも増して、審査に時間がかかりました。審査員の意見も割れ、甲乙つけがたかったです。コロナ禍の条件下でこんなに素敵な作品を作られたことに敬意を表します。数年前までだと考えられなかったことでしょう。テクノロジーの進化やみなさんの感性がもたらした成果だと思います。

今回のテーマは『CONNECT with』でした。何と繋がるのか、一つひとつの作品すべてにいいところがあったと思います。また、他チームの作品から良さを見出した方もいるでしょう。

ぜひ、本アワードに集まったことをきっかけに、ソーシャルディスタンスを取りながらも情報交換をしていただき、新たに繋がった人とも新しいモノづくりをしていってもらえたらと思います。

スタッフさんも新しく配信の仕方もドローンやCGなどを使うなどと色々と工夫され、リアル・バーチャルの融合による新たな体験の機会となりました。今後もますます進化したアワードをぜひ見たいと思っています。

私のアイディアとして、各チームの代表が集まるオールスターチームによる制作やそういったチームで行うスペシャルイベントを見られたらいいなと思うのですが、いかがでしょうか。アワード自体の意義や更なる発展が見られるのではないかと思います。本日はありがとうございました」

表彰式後には、全チームの作品によるプロジェクションマッピングと花火を掛け合わせたスペシャルショータイムが行われ、全プログラムが終了。無観客開催ながらも、熱気に包まれた約3時間のアワードでした。

初の試みによる制作経験を財産に、今後より一層の飛躍を期待

先の見えない状況下において、初の無観客・無料オンラインライブ配信での開催となった「東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.5」。参加者たちにとっても、今回は多くの新しい試みがあったと同時に、同じくらい多くの苦労があったことでしょう。そのなかでも仲間たちと一つの作品を作り上げられた経験は、彼らの人生の大きな財産となったのではないでしょうか。

同年代のクリエイターの作品を、国内外問わず目にすることで得られるものは数多くあります。多くの方に自分の作品を見てもらった経験やプロによる講評、評価も今後の成長に役立てられるでしょう。今回参加した若手クリエイターたちの将来の大きな飛躍が今からとても楽しみです。

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