新卒採用の時期変化と企業の注意すべき点

新卒就活、新卒採用時期の変化の流れを改めて理解し、採用担当者として押さえるべきポイントをお伝えします。


新卒採用の時期変化と、改善されない課題感「企業は優秀な学生を囲い込みたい」

新卒の採用時期は、日本経済団体連合会(以下:経団連)の加盟企業を中心に2000年代後半から変化を続けています。
新卒採用は、学生の卒業タイミングに合わせて、大きな母集団の中から優秀な人材を採用できる「定期採用」と認識されており、その年毎の経済状況や雇用情勢に大きく影響を受けます。
2013年度以前は、大学3年の10月1日に就活サイトがオープンされるのが一般的でしたが、それ以降、就活サイトオープン日は2回も変更し、企業の選考開始時期および内定時期は水面下で何度も変更されています。

2013年
<広報活動などの情報解禁=実質的な採用活動開始が大学3年の10月1日→12月1日へ>
・大学3年12月1日 就職サイトのグランドオープンおよび採用選考のエントリー開始 ※2か月後ろ倒し

2014年
<安倍晋三政権によるスケジュール変更打診>
2016年
・大学3年3月1日 就職サイトのグランドオープン ※3か月後ろ倒しに変更
・大学4年8月1日以降 選考開始

2017年
・大学3年3月1日 就職サイトのグランドオープン
・大学4年6月1日以降 選考開始 ※2か月前倒しに変更

~現在
・大学3年3月1日 就職サイトのグランドオープン
・大学3年6月1日 インターンシップ情報として就活プレサイトオープン
・大学4年6月1日以降 選考開始

直近の2016年度から2017年度の変化をくわしく見てみましょう。
2016年度は、就活サイトオープン日が12月より3か月も後ろ倒しになり、大学3年3月1日に設定されました。それに伴い、企業の本格的な選考開始は大学4年の8月以降へずれ込み、内定を出す時期も8月の選考以降となりました。しかし、これでは企業側が採用を満足に出来なかった際に、取り返す時間が不足してしまうため、翌年の2017年度には企業の選考開始は2か月前倒しの6月となります。

経団連中心に、新卒採用時期をコントロールしようとしますが、それぞれの立場で求めることが下記のように異なっているため、いくら就活時期を定めたとしても根本的な課題は解決されていない現状です。

■経団連:学業の妨げにならぬよう、就活時期を後ろ倒しにしたい
■企業:優秀な学生を早期に囲い込みたい→経団連の定めた時期を守らず、中小企業を中心に水面下で企業説明会に等しい広報活動やインターンシップを実施してしまう。
■学生:毎年スケジュールが変わるので、先輩の意見をもとに計画を立てづらい。就活サイトオープン前に、インターンシップやOBOG訪問を経て内々定をもらうケースも増加するが、本命企業の選考が大学4年の中盤のため、内定辞退をせざるを得ない状況になる。(就職情報大手のリクルートキャリアの発表によれば、6月の面接解禁前の段階ですでに就活生の3割が内々定を持っている)

このように、経団連の定めたスケジュールを守る企業と、守らない企業(水面下で早期採用活動を実施してしまう企業)の間で、学生たちが戸惑ってしまう事態が起きています。

2018年度はほぼ前年通りのスケジュールであったため、2019年度の新卒採用に関してもほぼ同スケジュールで実施されると予測されます。しかし近年の複数回の変化に伴い、学生の事前準備(志望企業の選択、筆記試験対策、エントリーシートの作成等の活動)に費やせる時間が大幅に短くなっていることは事実です。
学生にとっては3月の情報解禁までにインターンシップなど別ルートで情報収集を行うべきか、事前準備が悩ましいところでしょう。


企業が新卒採用を取り入れるメリットとデメリット

改めてですが、企業が新卒採用を実施するメリット、デメリットはなんでしょうか? 本来新卒採用のメリットとしては下記項目が考えられます。

(1)一定数人材を採用し続けることで毎年の採用戦略の検証、自社の幹部候補やリーダーを集めるためのノウハウをためやすくなる
(2)組織の活性化や事業の飛躍的成長へのきっかけづくりになる
(3)他社で就業した経験がない新卒は比較対照となる企業文化をもたないため愛社精神が生まれやすい。そのため、企業文化を継承する役目となり得る。
(4)採用後の研修が一括して行えるため、スケジュールが立てやすい

一方デメリットとしては、
(1)応募から選考、内定までのプロセスが大がかりになり、ランニングコストがかかる
(2)内定から入社までに時間があるために内定辞退者が出る可能性がある
(3)就労経験のない学生を一から育てるため教育コストがかかる
(4)新卒採用は景気動向に左右されやすく、人材確保が容易な年とそうでない年がある
などが挙げられます。

近年の日本では、少子高齢化の波を受けて、新卒者の数、労働人口そのものが激減してきています。そのため、新卒一括採用のメリットである「大量一括採用→一括育成」を毎年繰り返して、安定的に企業の社員を増員してくことが困難となりました。

リクルートワークス研究所が発表した「大卒求人倍率調査」によると、民間企業の求人総数は前年2017年から7.7%増加しているのに対し、学生の民間企業就職希望者数は前年同水準にとどまっています。その結果、企業同士で新卒学生の奪い合いが発生し、他の企業よりも早く採用活動を進めたいと思う企業が増えてしまう事態を招いています。新卒採用の時期変化の背景には、こういった人口バランスの変化が起因していることも理解し新卒採用の戦略を立てていくことが必要となります。


「内定辞退・早期囲い込み・インターンシップの取り入れ有無」気をつけるべきポイントとは?

企業が長期的に成長するためには人材確保は欠かせません。毎年新卒を採用することで企業を支える将来的な人材を育成することができますし、定期的に採用活動を行うことは、安定成長している企業という社会的評価も受けられます。

反対に若手のいない高齢化した企業の場合、組織を支える人員のピラミッド構成のバランスが悪くなり、最悪の場合、企業の存続が危うくなることでしょう。少子高齢化も背景にあり、新卒=若手の絶対数が減っていくことは否めません。この状況下で、企業はどのように新卒採用を実施していくべきなのでしょうか?

比較的容易に取り入れることのできる手法としては、下記項目が挙げられます。

(1)インターンシップ・1DAYインターンを実施し、大学3年3月以前から学生と何かしらの接点を持つ
(2)ダイレクトリクルーティング(企業説明会を介さない直接的なスカウト式の攻めの採用手法)といった、新たな採用手法を取り入れる
(3)アルバイトスタッフを社員化する(高校生・大学生初期から接点を持つ)
(4)自社サイト上のコンテンツマーケティングを強化し、WEB上で採用情報の発信を高める(就活サイトオープン時期に左右されずに、1年間通して自社の採用広報を実施する)
(5)グローバル新卒採用を実施する(日本の若手人口が減少しているため、早期に外国籍の採用を強化)
(6)新卒採用で補えない分は、中途採用・アルバイト・パート採用・派遣スタッフの取り入れ・外部へのアウトソースと、別ルートで補っていく

その他にも、内定者懇親会で学生向けに食事会・接待を行い、内定辞退を防ぐ活動も見受けられます。しかし、それは新卒採用の課題を、根本的に解決するものではないでしょう。


まとめ

新卒の採用時期が変化した背景を探っていくと、経団連・企業・学生の3者の立場の相違から生まれるジレンマや、日本の労働人口の減少といった大きな課題が存在することが見えてきました。
今後も、3者の立場の相違による根本的な課題解決が行われない限り、新卒採用の難易度は非常に高い状態が続くでしょう。各企業の採用担当者は、この状況を理解したうえで、自社にあった採用活動を模索し続けなければなりません。
自社で解決しきれないときは、外部の採用支援会社やWEBサイトでの情報収集を行いながら、自社にあった新卒採用の手法を見つけ出してください。